薬の形状として、大人であれば錠剤や粉薬が一般的ですが、子どもの場合は水薬、粉薬を多く見ます。それは、子どもの体重や年齢に合わせた個別の処方が必要なため、あらかじめ錠剤にしておくことができないからです。また、錠剤は子どもの場合のどに詰まる危険性もあります。子ども用に処方される薬には、あまみのある薬もありますが、そういったお薬も子どもによっては嫌がる場合があります。ここでは、子どもが飲みやすいような薬の飲ませ方の工夫と、薬を嫌がったときの対処についてお話します。
1内服薬の工夫
小児科でもらう水薬のほとんどにはシロップが混ぜてあって甘いにおいがします。粉薬のなかにも、ドライシロップと書かれたお薬には甘くコーティングされています(DSと略される場合もあります)。それでも子どもにとっては普段口にしない味なので、嫌がる場合が多いようです。
しかし、だからといってミルクと混ぜるといった子どもを騙すようなやり方は厳禁です(ミルク嫌いに繋がる可能性があります)。また、コップいっぱいにいれた水やジュースに溶かしたり混ぜることも得策ではありません(混ぜた水やジュースを飲み干さないと薬を飲んだことにはならず、一口飲んだらもう飲んでくれない場合も出てきます)。基本的には、水薬は指示量を「そのまま」、粉薬は「ごく少量の水で団子状にして」与えるのが良いとされています。以下に、与え方の工夫について記載します。
水薬の場合
- 市販しているスポイドや、スプーン、哺乳ビンの乳首を使って吸わせる
粉薬の場合
- 少量の水に溶かしてスポイド若しくはスプーン、ごく少量の水で団子状にする
- 薬をアイスクリームや薬用ゼリーで挟むようにして与える
薬を与える際に注意すること
- ミルクには溶かさない
- コップ一杯の水やジュースに溶かさない
- 薬はミルクの前に与える
2坐薬(ざやく)
解熱剤や吐き気止めのお薬として坐薬が処方されることがあります。坐薬はいままで使ったことがないパパママも、以下の手順を参考にしてみましょう(ただし、坐薬が「頓用」と書かれている場合には、いつどうなったら使用すべきか医師に相談しておきましょう)。坐薬は、子どもの月齢によっては使用する前にカットして使う必要がある場合があります。カットが必要かどうか、どこを切ったらいいかは薬剤師に確認しておきましょう。
- 1子どもを横向きに寝かせる
- 2おしりを広げ、坐薬の先の尖っている方から入れる
- 3入りにくい場合は、手で温めて少し溶かす、オリーブオイルやサラダ油などを塗る
- 430分後にうんちと一緒に出ていないか確認する
3薬を嫌がる子への対処
薬を嫌がることなくすんなり飲んでくれる子もいますが、嫌がることが多いようです。ただでさえ病気でしんどいのに、嫌な薬を飲まないといけないことはパパママとしても心苦しい場面だと思います。風邪のお薬のように、飲まなかったとしてもいづれ治るような病気の場合ならまだしも、飲まないと命に関わってくる病気をお持ちの場合だと、パパママの葛藤はひときわかと思います。
以下に、薬を飲まないといけない場合の対処方法を記載しています。この中で特に大事なことは、実施した後で「ほめること」です。それまで説得に長い時間がかかったとしても、実施時に大暴れしたとしても、薬を飲んだことに対して絶対に褒めてあげてください。どんなに暴れても、子どもは結果的に「頑張って飲んだ」のです。そのことをまず褒めてあげてください。そして、時間がかかったことや暴れたことを実施した後に持ち出さないようにしてください。「飲んだ」という成功体験を「成功」だと子どもが認識してくれれば、子どもは次はさらに頑張ってくれます。
親が事前にできる工夫 | 子どもと一緒にできる工夫 | 親がすること |
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それでもやっぱり苦い薬は飲みたくなくて泣きわめいたり、「今は嫌だ!」や「ちょっと待って!」と言い続ける場合もあるかと思います。そんなときは親自身もイライラしてしまいがちになってしまいます。お薬を飲ませるときは時間と心に余裕がある時に行い、穏やかな言葉で対応することが重要です。そして、達成できたらそれが目に見える形で示してあげることも重要です。紙に書いた表にシールを貼るようにすると、子どもは喜んで貼ってくれます。子どもも楽しみながらできるような試みが子どもの自尊心の成長にもつながります。
- 実施するのは親にも時間と心の余裕があるときに行う
- 達成していることが子どもにも目に見えるようにする(飲めたらシールを貼るなど)
- 実施した環境や方法を毎回変えない(スプーンならスプーンで飲むことを続ける)